【取材レポート】花岡車輌と共同開発した新しいかご台車「DANDY PORTER KAKU CROSS」を国際物流総合展2024にて展示しました

2024/09/20
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9月10日から913日まで東京ビックサイトで開催された「国際物流総合展2024」にて、花岡車輌株式会社とデザイン工学科の学生が共同研究で開発した新しいかご台車「DANDY PORTER KAKU CROSS」のプロトタイプ実機が展示されました。国際物流総合展2024は、3,000を超えるブース展示、4日間で計80,000人以上が来場した、国内外の物流に関する最新システムやサービスが集結するアジア最大の物流?ロジスティクスの総合展示会です。プロトタイプ実機の展示に伴い、開発に携わった学生2名(坂井美穂さん?宮本比陽子さん)が説明員として参加しました。DANDY PORTER KAKU CROSSは来年4月を目途に販売に向け、開発を進めています。



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共同研究開発は、昨年度実施した3年次対象の演習科目「プロジェクト演習1」(担当:蘆澤雄亮教授)での花岡車輌株式会社とのコラボレーションをきっかけに始まりました。学生たちは「花岡車輌株式会社の可能性を広げる」をテーマに、ライフ&インテリア事業を拡充するようなデザインを提案し、そのうち、坂井さん?宮本さんの提案について、製品化に向けた共同研究の実施が決定。坂井さんと宮本さんは20244月から約半年間、花岡車輌株式会社の方とともに試行錯誤を重ねました。

学生インタビュー

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デザイン工学科4年生 坂井 美穂さん(左) 宮本 比陽子さん(右)

ーー「かご台車がダサいのは当たり前なのか」というコンセプトが決まった経緯を教えてください。
宮本さん:きっかけは2人で行き詰っていたところに頂いた蘆澤先生の「せっかくおしゃれなオフィスを作ったのに、かご台車が景観を崩しているからおしゃれにしてくれない?」という一言でした。実際調べてみると、かご台車は似たようなデザインが多く、街を歩いてみてもおしゃれなブティックが多いところなのにダサいかご台車が道路に普通に出ていたり。もっとかっこいいデザインがあれば、色々な店舗や業界で使っていただけるのではないかと、提案の方向性が決まりました。プロジェクト演習1での提案にあたっては、「花岡車輌さんがやるべきかどうか」「花岡車輌さんらしいかどうか」を重要視し、花岡車輌さんの企業理念や目指す姿の資料と照らし合わせながらひたすら調べ、考えました。各製品の成り立ちを調べる中で、既存のイメージを覆すのが花岡車輌さんなのだと思い、既存のかご台車のイメージを覆したい私たちの想いとも合致すると考え、このコンセプトで進めました。共同研究開発にあたっても、このコンセプトだけはずっと変わりませんでした。

ーー提案するデザインを考えるうえで活かせたデザイン工学部での学びを教えてください。
坂井さん:先生方から「インプットを増やす」という話はよくされていたので、花岡車輌さんにふさわしいデザインはどんなものかインターネットでデザインを検索したり、2人で実際に銀座やソラマチへ足を運んで、かっこよさや高級感のあるデザインを調査したりしました。アウトプットに関しても、「1案じゃなくて10案出して」などと指示が出ることが多いのですが、とにかくたくさん出してみないと良いものは見つからないと学んでいたので、今回もたくさん案を考えました。

ーー共同研究開発では具体的にどのようなことを行いましたか?

坂井さん:実際に制作するところ以外はほぼ全て携わりました。20244月頃共同研究開発が決まり、4月初旬に工場見学に行きました。そこで溶接の手間やコストなどアイデアを形にしていく過程にある現実的な障害について教えていただいたり、開発スケジュールを決めたりしました。それからは完成する9月まで大体2週間に1度のペースでオンラインミーティングを行いました。工場見学の際に、コンセプト以外はまっさらな状態になったので、ターゲットや使用シーンも全て考え直すことになりました。
宮本さん:毎回のミーティングでは報告書で何案もアイデアを出して、花岡さんと蘆澤先生に「これいいね」「これは可能性ないね」と判断していただいて、考え直して、の繰り返しでした。ターゲットや使用シーンを考えるにもインターネットだけでは限界があると思い、電話をかけたり、実際の店舗で店員さんに質問したり、行動の連続でした。かご台車の形状についても最初は3Dのモデリングだけで話を進めていたのですが、サイズ感などがわからないので「1分の1スケールで作ってみて」と指示が出て、DIY経験もない中、木で作ったりもしました。

ーー共同研究開発を通して得た学びを教えてください。
宮本さん:販売を視野に入れた開発を経て、工学面や安全面、コスト面、強度面など、意識していなかった部分について学ぶことができました。授業では正直好きなアイデアだけでやっているところもあったのですが、実際に作って販売するとなると「需要があるのか」「コストはいくらかかるのか」を重視していかなくてはならないのだと学びました。
坂井さん:パネル一つとっても自分たちがやりたいデザインではなく、花岡車輌さんが出すにふさわしいデザインを考えなければならなかったので、視点を自分から企業に変える必要性を学びました。また、1人でやっているうちには気づけなかった当たり前に気づかされることも多かったです。販売を視野に入れているので、使用するボルト1つとってもユーザーや工場が困らないよう汎用性のあるものでなくてはならず、実際にホームセンターに行って調査するよう指示が出て、2人で3時間かけてお店にあるボルト全ての径を調べたこともありました。これでいいと妥協するのではなく、これでなくてはならない理由を探していかないといけないということも実際に企業の方とやっているからこそ得ることができた学びだと思います。

ーーこの経験を通して、キャリアに関する考えに変化があれば教えてください。
坂井さん:1,2年生のときに、「デザインの才能ないな」と壁にぶつかっていて、正直もうデザインはやりたくないと思っていました。嫌いになるくらいだったのですが、今回のプロジェクト演習と共同研究開発を通して、デザインの面白さを感じることができたので、今は今回経験させていただいたようなアイデアを形にする仕事に興味を持っています。また、もともとかご台車が好きというわけではない状態で今回の開発に携わったのですが、実際やってみるとかご台車にも愛着が湧いてきた経験から、自分はどこでも楽しめるのかもしれないと思い始めました。「この業界で働きたい」というこだわりがないことに気付けたので、色んな業界に関われるような仕事につきたいなと思っています。
宮本さん:私はこの経験を通して、夢中になれる仕事がいいなと思いました。今回「良いかご台車を作りたい」という目的のもと、今までにやったことのないことを沢山経験させていただきました。頭の中がかご台車のことだらけだったのですが、こんなにもかご台車のことだけ考えられるのは楽しいなと感じました。これまでは作りたいものの希望があったのですが、今はどちらかというと、特定のものというよりも、このくらい熱意をもって夢中になれる仕事につきたいと考えています。また、今回は「市場調査だけ」「デザインだけ」ではなく、企画から開発まで全部に携わらせていただきました。全てに携わらせていただくことで、その分一貫性のあるストーリーを作れ、説明も上手くできたと感じているので、最初から最後まで責任を持って開発に携われるような仕事に興味を持っています。

ーー国際総合物流展に参加しての感想を教えてください。
宮本さん:最初蘆澤先生に「物流展で市場の反応を見てきて」と言われたときは、「ただ展示するだけでは?」とピンと来ていませんでした。実際この場所に立ってみると、立ち止まってくださったり、コメントをくださったりして、自分のデザインしたものにこのように反応がもらえるのかと有難さと展示会に出す意義を感じました。また、説明を聞いてくださった方に業種を伺うと、空港関係や通信業、製造業、大学の教授などと様々で、こうした色々な方々に反応を頂くことができ、面白かったです。
坂井さん:自分が説明側として、大規模な展示会に参加できていることが夢みたいです。色々な方が興味を持って見てくださったり、説明を聞いて面白がってくださったり、アドバイスをくださったりと、とても貴重な経験をさせていただいているなと思います。自分がデザインしたものに対する市場の反応を見ることができたのが非常に興味深く、将来もこういう風に自分が携わった製品やサービスなどに対して説明してお客様の反応を見ることができたらいいなと思いました。

 

花岡車輌株式会社
常務取締役 総務本部本部長 兼 販売企画室室長
花岡雅氏 コメント

授業で最初の発表を聞いたときは、正直なところ全グループ中最下位でした。蘆澤先生に完膚なきまでに指摘されていましたが、きちんと悩んでいる様子でしたし、後日銀座の街を歩きながらアイデアを探していたと聞いて、真面目な子たちなのだと思いました。
共同研究開発は4月からこの半年間、2週間おきにやっているのですが、進捗もかなりしっかり出してくれています。蘆澤先生や僕が指摘したところに関しても必ずその点は抑えたうえでプラスアルファのものを持ってきてくれており、「期待を上回る」というデザイナーとして大事な部分も持ち合わせていると感じました。

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